「はてなどう」「ナラカ」「円環伝承」共用。書き手は ちゃすかとすわさきの二人。
オオイヌノフグリ

大犬の陰嚢[オオイヌノフグリ] Veronica persica
別名:犬の金玉[イヌノキンタマ]、大畠鍬形[オオハタケクワガタ]、畠鍬形[ハタケクワガタ]、大瓢箪草[オオヒョウタングサ]、瓢箪草[ヒョウタングサ]、天人唐草[テンニンカラクサ]、瑠璃唐草[ルリカラクサ]、瑠璃鍬形[ルリクワガタ]、星の瞳[ホシノヒトミ]、星の涙[ホシノナミダ]

ゴマノハグサ科クワガタソウ属の越年草。
大変お馴染みで日本の春の風物詩のような花ですが、比較的近年、明治時代に渡来した帰化植物です。西アジアからヨーロッパ、アフリカが原産地。草丈10~35cmで花の直径は1cmくらい。

朝に咲いて夕方には閉じる一日花。
その日のうちに受粉できなかったとしても、花が閉じるときに自分の雄しべと雌しべがくっつくので自家受粉します。なんと合理的な。

名の由来は、大きな「イヌノフグリ」だから。
#「イヌノフグリ」は同じクワガタソウ属の草で、オオイヌノフグリによく似ていますが小型です。草丈10~25cm。花は白っぽく、赤みがかかっています。外来種のオオイヌノフグリに押されて目立たなくなりつつあるようです。全国で絶滅危惧Ⅱ類指定。
#別名見るに、イヌノフグリとオオイヌノフグリは結構混同されてるような気がします。


では「イヌノヌグリ」の名の由来はと言うと、二つくっついて毛の生えた実の形が、犬のふぐり(陰嚢、俗に言う金玉のこと)に似ているから。

オオイヌノフグリの実

別名の「瓢箪草[ヒョウタングサ]」も、この二つ並んだ実の形に因んだ名かと思います。
なお、実は熟すと貝のようにパカリと口を開けて種を出します。上の写真の中央下部がその状態。中には2mmくらいの種が片側三粒ずつほど入ってます。

実際に実を見ると「イヌノフグリ」の名はナルホドという感じでユーモアセンスを感じますが、世間的な評判は良くないみたいですね。下品だ、あんまり可哀想だと書かれてあるのを結構見ます。怒るまでしなくてもいいのにと個人的には思いますが。(^_^;)
いやでも、別名の「イヌノキンタマ」は流石に嫌かも(笑)。

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私はこの花を見ると、山岸凉子の漫画『天人唐草』を思い出します。
主人公・響子が幼い頃、この花を見つけて無邪気にイヌノフグリという名を口にすると、父が「女の子が下品な!」と激怒したのです。フグリの意味も知らなかった幼女はただ怯え、罪悪感と恐怖心が刻まれて萎縮します。父に従順な母がそっと、この草には「天人唐草」という別名があるから、今後はその名で呼びなさいと教える。
女性はかくあるべき、という封建的な男性倫理に拘束される出発点。そして、そのまま抜け出せない。
対人関係(特に異性への)に消極的な女性には、かなりグサグサとくる内容かと。名作です。
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オオイヌノヌグリの英名は「Iran speedwell(イランクワガタソウ)」系の「○○ speedwell」が基本ですが、他にも「Bird's eye(鳥の目)」「Cat's eye(猫の目)」といったものがあります。
日の当たる道端に咲くこの花を見た時、蒼く丸く光って見えますから、鳥の目、猫の目という喩えはなかなか詩的で適切なのかも。イタリアには「Occhietta della madonna(聖母マリアの小さな瞳)」という呼び名があるようです。
日本での同系統の別名に「星の瞳」があり、フグリ倦厭派の方々には大変好評みたいです。

おまけ。中国名は「阿拉伯婆婆納[アラボポポナ]」。「阿拉伯」はアラブ、「婆婆納」はイヌノフグリのこと。


オオイヌノフグリの花言葉
信頼
清らか、神聖



オオイヌノフグリの学名は「Veronica persica」。クワガタソウ属を示す「Veronica[ベロニカ]」は、キリスト教の聖女ベロニカと同じ綴りで、彼女に捧げられた名だと言われます。
花言葉はその辺りに関係しているようです。

ベロニカは、ゴルゴタの丘へ十字架を背負わされ引き立てられて行くイエス・キリストがよろめき倒れて血を流した時、駆け寄って純白のハンカチで血を拭った優しい老女。
この時、血の一滴がクワガタソウ属の花にも滴ったので、この花にはキリストの面影が備わっていると言うのです。

ただし、学名「Veronica」は、元は「Vettonica[ベットニカ]」だったものが転訛したというのが定説で、聖女ベロニカの伝説は後に結びつけられたものに過ぎないようです。


なお、小型のイヌノフグリの学名は「Veronica didyma」ですが、「didyma[ディディマ]」とはギリシア神話の日月の双子神、アポロンとアルテミスのこと。
やはり、二つ並んだ実の形に因んでいるのでしょうか。それとも、日月のように輝くというイメージ?


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【2010/06/02 19:00】 | すわさき・その他
【タグ】 この花なんだ  漫画の感想  
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