「はてなどう」「ナラカ」「円環伝承」共用。書き手は ちゃすかとすわさきの二人。
ニワゼキショウ属は全て北アメリカからの帰化植物です。
どれもよく似ているうえ自然交雑種も多い。研究者によって分類は大きく異なり、未だ定まっていません。
日本でも大いに混乱しており、あてられた学名すら資料によって異なる有様。
よって今回は、学名の併記はあえて諦めることにしました。悪しからずご了承ください。




ニワゼキショウ

庭石菖[ニワゼキショウ]
別名:草菖蒲[クサアヤメ]

アヤメ科ニワゼキショウ属の一年草。
草丈10~20cm、5~6月に咲く花は直径1~1.3cmほどで小さくて可愛い。

最初に書いたように、北アメリカ原産の帰化植物。
園芸用として輸入された大庭石菖[オオニワゼキショウ]が帰化したのが明治二十年ごろとされますが、雑草として入り込んだらしいこちらがいつごろ帰化したのか、正確なことは判りません。
ともあれ今では日本各地に自生しており、私達の目を楽しませてくれています。

日当たりのよい芝生のような場所によく生え、可憐に咲き誇ります。
けれど花持ちしないので花瓶に飾ることはできません。朝咲いて夕方には受粉を終えしぼんでしまう一日花です。その代わり新しい花が毎日次々と咲きますけれども。いずれにせよ花材には出来ない、外で見ることのみで楽しめる花なのです。


ニワゼキショウアヤメ科らしく、三枚の内花被片と三枚の外花被片から成る六弁花です。
(外花被片と内花被片は、よく見ると紫の縦筋の本数が違っています。
右の写真、筋の多い花弁と少ない花弁が交互に三枚ずつあるのが判りますか?)

ただ、菖蒲[アヤメ]や花菖蒲[ハナショウブ]の外花被片と内花被片が形状も大きさも異なるのに対し、こちらは殆ど差がありません。おかげで花の形が星印[アスタリスクマーク]のように整っています。

雄しべは三本で、その先端の葯[やく](花粉の付いているところ)は黄色。花の中心部分は黄色で、その周囲が濃紫の太い帯で縁取られ、花の中心にくっきりと六角形が出来ています。


ニワゼキショウ(白花)花色は、ピンク(赤紫)の他に白も。

なお、黄色い花の咲くものがあり、「黄花庭石菖[キバナニワゼキショウ]」と呼ばれます。
これをニワゼキショウ属の別種とするか、あくまでニワゼキショウの変種とするか、研究者の間では意見が分かれているそうです。



名の由来は、サトイモ科の「石菖[セキショウ]に似ていて庭に咲くから」だそうですが。……似てるかなあ?
いえ、花が付いていない状態の葉だけ見れば、サイズは違いますがタイプ的には近いですけども。強いて似ていると言うようなものでもない気がします。大きさも葉の質感も違いますし、(花のない時期であろうとも)見て間違えることはあり得ないですから。


ニワゼキショウの花言葉
繁栄、豊富、豊かな感情
愛らしい人
きらめき

「豊富」系の言葉は、群落を作って次々咲くことからイメージしたんでしょうね。




オオニワゼキショウ

大庭石菖[オオニワゼキショウ]

アヤメ科ニワゼキショウ属の一年草。
花期はニワゼキショウと同じ5~6月で、同じような場所に生えます。混生していることも多い。
やはり一日花で、朝咲いて夕方にはしぼんでしまいます。


ニワゼキショウの近縁種でよく似た花ですが、識別点が幾つかあります。

一つ。
草丈が高い。ニワゼキショウが10~20cm程なのに対し、25~50cm程になることも。
これが「大」ニワゼキショウと呼ばれる所以です。
(ただし、ニワゼキショウも30cm前後に伸びていることがあり、逆にオオニワゼキショウでも地面に張り付くように咲いていることもあり。これのみを識別点にするのは難しいかも。)

オオニワゼキショウとニワゼキショウの花、大きさ比較二つ。
個体差はありますが、花がニワゼキショウに比べてやや小さい傾向がある。
花径8mm~1cm程度。(ニワゼキショウは1~1.3cmほど。)


オオニワゼキショウの花三つ。
オオニワゼキショウの内花被片は尖り気味・反り気味。
内花被片と外花被片の開き具合のバランスが微妙にずれていることがままあり、花弁が不揃いに見えがち。

つまり、ニワゼキショウほどには綺麗な星型に開いていないことが多いです。
なんとな~く歪に咲いている。
尤も、中にはニワゼキショウに引けを取らず綺麗に咲いているものもあります。


オオニワゼキショウとセキショウ(白花)の色比較五つ。
ニワゼキショウに比べ、花の中心部にある濃紫色の帯部分が薄い。
また、花色は青みがかった白。(ニワゼキショウの白花は、赤紫がかった白。)


オオニワゼキショウとニワゼキショウの花托比較六つ。
オオニワゼキショウの花托はキュッとくびれてナイスバディですが、ニワゼキショウはずん胴。(矢印で示した部分。)


そして、最大の識別点。
オオニワゼキショウとニワゼキショウの実の大きさ比較ニワゼキショウの実が3、4mm程度なのに対し、オオニワゼキショウの実は5、6mmほどもあり、明らかに大きい。

見ればはっきり判るほど大きさが違うので、ここで見分けることが出来ます。




オオニワゼキショウの花言葉
清らかな貴婦人




ところで、ニワゼキショウやオオニワゼキショウが群生している中に、こんな花を見つけました。
純白で、花弁の筋は黄色く、花の中心に濃色の帯はありません。

純白花のオオニワゼキショウ?

雄しべは三つ、花弁は細く尖って、内花被片と外花被片の差が明確に判り、なんとなくいびつに咲いている。
花の大きさはニワゼキショウより小さい。実はニワゼキショウより大きい。
花托はオオニワゼキショウと同様にきゅっとくびれている。

これらの様子から、オオニワゼキショウの白花かなと単純に考えたのですが、気になることが一つ。
草丈の高いところがオオニワゼキショウの特徴の一つなのに、この花は5cmほどと低く、高く育った株が一つも見当たらなかったのです。

白花のオオニワゼキショウ?

尤も、オオニワゼキショウでも草丈の低いものはあります。
現に、この同じ場所にも、草丈の高いオオニワゼキショウと地面に貼り付くように咲いているオオニワゼキショウ(花が、草丈の高いものより小さい)が混在していました。↓

草丈の高いオオニワゼキショウと低いオオニワゼキショウ

ただ、この草丈の違いが単に生育度合いの差なのか、もはや異種と呼ぶべきものなのかは判りません。
草丈が低く花の小さなオオニワゼキショウは、かなりの規模で繁茂し、ニワゼキショウや普通のオオニワゼキショウと混じり合って咲いていました。


Webで調べたところ、純白のニワゼキショウの写真は何枚かヒットし、少なくとも関東以西にあるものだと判りました。
やはり草丈が低いようです。
が、それ以上は分からない。

未だ分類されていないニワゼキショウということらしく。現時点では仮称すら成立していない(少なくともWebに情報が流れてきていない)ということのようです。
「白花庭石菖」ではニワゼキショウの白花と紛らわしいですから、個人的に、「真白庭石菖[マシロニワゼキショウ]」とでも呼んでおくことにします。

白花のオオニワゼキショウ?




その他、ニワゼキショウの仲間について。

一つ。
オオニワゼキショウとニワゼキショウが混生している辺りに、花径が1.5cm前後もあるような、いやに花の大きなニワゼキショウが咲いているのを見たことはありませんか?

アキマルニワゼキショウ

これはアキマルニワゼキショウと仮称されている異種で、ニワゼキショウとオオニワゼキショウが自然交雑して生まれた子供です。
花の色はニワゼキショウそっくりの赤紫系統が多いそうですが、稀にオオニワゼキショウのような青みがかった白花~やや濃い青系の花も見られるそうです。

アキマルニワゼキショウニワゼキショウより草丈が高く(30cm)、花の中心の濃色の帯が薄い。

ただ、花の色は変化が多いそうで、見分けのポイントにはし難いようです。

異種間に生じた子の宿命で、アキマルニワゼキショウは種子を作ることが出来ません。(その代わり腋芽から増えていけるそうです。)
大輪の花を咲かせるニワゼキショウで実の生らない株があったら、アキマル~だと判断できるでしょう。



二つ。
古い図鑑には、オオニワゼキショウの別名として「藍色庭石菖[アイイロニワゼキショウ]」「瑠璃庭石菖[ルリニワゼキショウ]」の名が併記されているそうですが、近年否定され、今では別種として扱われています。

アイイロニワゼキショウ(ルリニワゼキショウ)はオオニワゼキショウよりも花の青味が濃く、花弁が細めで先がツンと尖り(鉤型、糸状と表現する人もいる)、何より、三本の雄しべがくっついて一本になっている点が最大の相違点です。(オオニワゼキショウは雄しべが三つ見える。)
また、オオニワゼキショウやニワゼキショウの雄しべは花の奥に引っ込んでいますが、アイイロ~のそれは外に突出しています。
もう一つの特徴として、茎のヒレ(翼片)がより目立つそうです。よって「鰭庭石菖[ヒレニワゼキショウ]」の別名も持ちます。

アイイロニワゼキショウは園芸品としても出回っている模様。


三つ。
そんなアイイロニワゼキショウに似た近縁種に「一房庭石菖[ヒトフサニワゼキショウ]」があります。
雄しべはやはり一本で突出。桔梗[キキョウ]ほどに青い花で、花弁の先がツンと尖っています。
ただし、アイイロ~含む多くのニワゼキショウの仲間が一本の花茎の先に複数の実を付ける(毎日一輪ずつ花を咲かせ、一つずつ実を増やして行く)のに対し、一つしか付けません。
一本の花茎に一つの花しか咲かせず一つの実しか付けない。よって「一房[ヒトフサ]」の名が冠されているわけです。




ところで、複数のWEBページでニワゼキショウの別名を「ナンキンアヤメ」だと書いてあったんですが、書籍でそう書いているのを今のところ見たことがないです。南京菖蒲[ナンキンアヤメ](Iris pumila)は小型のアヤメ類で、ニワゼキショウとは全然違う花のよーな…。むむむ。

ナンキンアヤメ(おしゃべりな部屋)
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【2010/06/01 22:50】 | すわさき・その他
【タグ】 この花なんだ  
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お詳しいですね!
小林徹
はじめまして。詳しいご案内をありがとうございます。
似ていても違う花なんですね。そもそもオオニワゼキショウという名前も、今日初めて聞いたくらいなのですが。またお邪魔させていただきます。

Re: お詳しいですね!
すわさき@管理人
ありがとうございます。
また見にきてやってください。


こんにちは
南ちゃん
ニワゼキショウにもいろいろ種類があると調べていて、たまたまお邪魔しました。
たくさんの種類を観察しておられますね!

ところで 草丈5センチくらいの白いニワゼキショウ、ひょっとして「セッカニワゼキショウ(雪花庭石菖)」かもしれません……
私はまだ見たことはないのですが いつかお目にかかりたいと思っています。

Re: こんにちは
すわさき@管理人
コメントありがとうございます。

おお、そうなんですか!
雪花庭石菖……。素敵な名前ですね。

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コメント
この記事へのコメント
お詳しいですね!
はじめまして。詳しいご案内をありがとうございます。
似ていても違う花なんですね。そもそもオオニワゼキショウという名前も、今日初めて聞いたくらいなのですが。またお邪魔させていただきます。
2013/05/12(Sun) 23:57 | URL  | 小林徹 #Ohw5.t0c[ 編集]
Re: お詳しいですね!
ありがとうございます。
また見にきてやってください。
2013/06/01(Sat) 00:51 | URL  | すわさき@管理人 #-[ 編集]
こんにちは
ニワゼキショウにもいろいろ種類があると調べていて、たまたまお邪魔しました。
たくさんの種類を観察しておられますね!

ところで 草丈5センチくらいの白いニワゼキショウ、ひょっとして「セッカニワゼキショウ(雪花庭石菖)」かもしれません……
私はまだ見たことはないのですが いつかお目にかかりたいと思っています。
2014/07/22(Tue) 10:41 | URL  | 南ちゃん #BH3Wa/do[ 編集]
Re: こんにちは
コメントありがとうございます。

おお、そうなんですか!
雪花庭石菖……。素敵な名前ですね。
2014/08/05(Tue) 02:31 | URL  | すわさき@管理人 #-[ 編集]
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