「はてなどう」「ナラカ」「円環伝承」共用。書き手は ちゃすかとすわさきの二人。
ムシトリナデシコ

虫捕撫子/虫取撫子[ムシトリナデシコ] Silene armeria
別名:蠅捕撫子[ハエトリナデシコ]、小町草[コマチソウ]

ナデシコ科マンテマ属の一年草。花は春の終わりから夏。草丈30~50cm前後。稀に白花あり。
帰化植物です。南欧・地中海沿岸原産で、日本には幕末に観賞用として移入、全国の野に広まりました。

痩せて荒れた土地を好み、道端や河原に自生しますが、花壇や道路脇の植え込みに意図的に植えられていることも多くて、あまり野草というイメージの湧かない花です。花の色が目立って華やかですしね。満開の時期の群落は、濃桃のヴェールのようで、大変美しいです。

ムシトリナデシコ名の由来は、葉の下の節々に粘液が出ていて、そこに小さな虫をくっつけることがあるから。

左の写真、矢印を付けているところ、茎が茶色く黒ずんでいるのが判りますか? それが粘液です。
青い矢印のところには、別の花の花弁か何かのゴミがくっついています。

とはいえ、この草は食虫植物ではありません。くっつけた虫から栄養を吸収したりはできないのです。
ではどうして粘液を出すのか。
理由は不明ですが、くっつけて殺すことによって、虫から身を守っているのだという説があります。

虫を受粉に利用して殺す花が「魔性の女」なのだとしたら、この花は近付くことすら許さぬ「鉄壁の女」…!?
いやいや、花に直接来る虫は許すけど下から這い上がろうとする奴は許さん! という鉄のマナー女でしょうか。

ちなみに、英名でも「sweet-william catchfly」と言います。「sweet-william」は「美女撫子[ビジョナデシコ]」(ナデシコ科ナデシコ属)のこと。「蠅捕りビジョナデシコ」ってことですか。



ムシトリナデシコの花言葉
青春の愛、未練、しつこさ、裏切り、罠、偽りの愛

花を高潔な女性、粘液に絡まれて花に達せずに死ぬ虫を、手ひどく拒まれる哀れな男性とイメージしての言葉みたいですね(苦笑)。




以下に、同じナデシコ科マンテマ属の花を幾つか紹介。
シロバナマンテマ

白花マンテマ[シロバナマンテマ] Silene gallica var. gallica

ナデシコ科マンテマ属の越年草。中~南ヨーロッパ原産の帰化植物。河原や芝などに春から夏にかけて咲きます。
草丈20~50cm。花は1cm前後。茎がヒョロリと細く小さく、気を付けていないと見落としそうな花。
河原の砂地や芝生、道路の中央分離帯など、荒れて痩せた感じの土地によく見られます。

シロバナマンテマ名前の通り、花色は基本的に白~淡桃色。
右の写真のように濃桃色のものもあります。


茎に産毛が、萼筒(花と茎を繋げているつぼ型の部分)にはそれ以上の長~い毛がボウボウ生えています。これは腺毛で、粘液が分泌されており、触るとべたべたします。やはり小虫がくっつく模様。

実は英名(下に紹介する普通のマンテマと共通)が「Small-flowered catchfly」で、やはり「蠅捕り」になってるんですよね。直訳すると「小花蠅捕り草」ですか。

なお、濃桃色の花に似ていて萼筒や茎に毛のない「イタリーマンテマ」もあります。




マンテマ

マンテマ Silene gallica L. var. quinquevulnera (L.) Rohrb.

ナデシコ科マンテマ属の多年草。帰化植物。シロバナマンテマと花の時期も生え易い場所も腺毛が生えているところも同じで、花の色と模様(花弁の太さも?)が違うだけ、です。
余談ながら、真ん中下部に写っているのは「豆軍配薺[マメグンバイナズナ]」。

シロバナマンテマが弘化年間(1844-1848)に日本に移入されたのに対し、やや早く、天保(1830-1844)~弘化年間に移入されたとされます。
そのため、和名ではこちらのマンテマが基本になっていますが、学名上ではシロバナマンテマ(Silene gallica var.gallica)の方がこちら(Silene gallica var.quinquevulnera)の母種になります。
なお前述しました通り、英名ではシロバナもこちらも区別されず「Small-flowered catchfly」。


「マンテマ」という名前、実は日本のみで使われている和名です。どうしてそう呼ばれるのかは定かではありません。

仮説1。

幕末に観賞用として移入された際「まんてまん」と呼ばれていたのが転訛した。「まんてまん」は「Agrostemma[アグロステンマ]」の転訛。アグロステンマとは、ナデシコ科アグロステンマ属の「麦仙翁/麦撫子(Agrostemma githago)」のこと。
仮説2。
浜マンテマ(Silene maritima)の種小名「maritima[マリティマ]」の転訛。

仮説1は「日本植物学の父」と言われる牧野富太郎氏の説ですが、「アグロステンマ」が「まんてまん」になるというのはかなりの跳躍力が必要な気が。しかもこれらは、同じナデシコ科ではありますが、花が全然似ていない……。


学名での属名「Silene[シレネ]」の由来については、これまた二説があるようです。

一説に、
ギリシア語の「sialon(唾液)に由来する。
一説に、
ギリシア神話に登場する、馬の二本足と耳を持つ老賢者・Silenos[シレノス]族のシレノス爺さん(Papposilenos)に因む。シレノス爺さんが酒に酔って泡を吹いた様子を、マンテマが腺毛に粘液を分泌する様子に例えた。
#シレノス族はケンタウロス族と同様に、酒好き・好色の放蕩種族ですが、酒と芸術(熱狂)の神・ディオニュソスの師であった「シレノス爺さん」は、大変な賢者だったと伝えられます。しかし大酒呑みなのは変わらなかったようで。

要するに、毛むくじゃらな人(Silenes)が唾液(sialon)でべたべたになった感じ、ということなんでしょうか。
……うう。折角可愛い花だと思っていたのに、ちょっと気持ち悪くなってきたかも。



マンテマの花言葉
忘れそうにありません




サクラマンテマ

桜マンテマ[サクラマンテマ] Silene pendula L.
別名:袋撫子[フクロナデシコ]、大マンテマ[オオマンテマ]、シレネ・ペンデュラ

ナデシコ科マンテマ属の一年草。
地中海沿岸地方原産で、明治中期に園芸植物として渡来、逸出して帰化したとされます。
マンテマの仲間なので、勿論毛深い。
雌性異株で、両性花を付ける株と雌株があります。

先が切れ込んだ鮮やかなピンク色の花弁を桜[サクラ]に見立て、サクラマンテマという和名が付けられた模様。
上で紹介したマンテマ類に対し、花が三倍くらい大きくて目立ちます。別名の「オオマンテマ」はそこに由来するのでしょうか。
残る別名「フクロマンテマ」は、花の萼筒部分が花後に袋のように膨らむ点に因むようです。(上の写真、一番下にチラリと、その状態の萼筒が写っています。)


サクラマンテマの花言葉
偽りの愛、欺かれた人


ムシトリナデシコの花言葉と重なっていますね。
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【2010/05/22 17:41】 | すわさき・その他
【タグ】 この花なんだ  
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やらずぶったくり?
うっかりかさご
 はじめまして。立山山麓に住んでおります。
 サクラマンテマの写真を探していて辿り着きました。
 わが家の畑にマンテマが今咲きはじめたところです。これは氷見海岸で5年前から採取した種子で育てたものです。かわいくてきれいな花です。
 ところでムシトリナデシコの、あの花首の下のネバネバの部分ですが、蟻よけだと聞いたことがあります。ほかの蜜を求めて花を訪れる虫たちは、花粉の交換をしてくれるのに、蟻はあのツルツルの体で花粉を運んでは呉れず、蜜だけ素早く盗んで行くのだそうです。蟻は羽がありませんから茎を辿ってくるのであの部分は関門として通らなければならず、ということで時々わが家のムシトリナデシコに蟻がくっ付いているのを見かけます。もうすぐ畑の一部をピンクに染めていっぱい咲きます。
 今年は春が遅く、こちらではやっと芍薬が咲きはじめました。サクラマンテマは今年から殖やす努力を始めたところです。同じお仲間のカスミソウに似てますね。またお尋ねいたします。よろしく。

Re: やらずぶったくり?
すわさき@管理人
はじめまして。
なるほど、アリよけですか。

どうしてそんな風に進化していけるのか。
生命って不思議だなーと思います。


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この記事へのコメント
やらずぶったくり?
 はじめまして。立山山麓に住んでおります。
 サクラマンテマの写真を探していて辿り着きました。
 わが家の畑にマンテマが今咲きはじめたところです。これは氷見海岸で5年前から採取した種子で育てたものです。かわいくてきれいな花です。
 ところでムシトリナデシコの、あの花首の下のネバネバの部分ですが、蟻よけだと聞いたことがあります。ほかの蜜を求めて花を訪れる虫たちは、花粉の交換をしてくれるのに、蟻はあのツルツルの体で花粉を運んでは呉れず、蜜だけ素早く盗んで行くのだそうです。蟻は羽がありませんから茎を辿ってくるのであの部分は関門として通らなければならず、ということで時々わが家のムシトリナデシコに蟻がくっ付いているのを見かけます。もうすぐ畑の一部をピンクに染めていっぱい咲きます。
 今年は春が遅く、こちらではやっと芍薬が咲きはじめました。サクラマンテマは今年から殖やす努力を始めたところです。同じお仲間のカスミソウに似てますね。またお尋ねいたします。よろしく。
2013/05/23(Thu) 20:13 | URL  | うっかりかさご #1TMPnBgs[ 編集]
Re: やらずぶったくり?
はじめまして。
なるほど、アリよけですか。

どうしてそんな風に進化していけるのか。
生命って不思議だなーと思います。
2013/06/01(Sat) 00:52 | URL  | すわさき@管理人 #-[ 編集]
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