「はてなどう」「ナラカ」「円環伝承」共用。書き手は ちゃすかとすわさきの二人。
スミレ

[スミレ] Viola mandshurica
別名:相撲取り草[スモウトリグサ]、相撲取り花[スモウトリバナ]、カケビキバナ、カギトリバナ、ヒトバグサ、太郎坊[タロボウ]

スミレ科スミレ属の多年草。花期は春。
強くて沢山生える野草で、愛らしい花の様子で昔から愛されています。

特徴は、葉が細長く、葉柄に目立って翼があること。
花は1.5cmくらい。


別名の「相撲取り草」は、子供がこの花の距(花の後ろに出っ張った部分)を絡ませて引き合う花相撲で遊んだことから。
伊勢地方では、そのように花相撲に使う花のうち、スミレを「太郎坊[タロボウ]」、ケシ科の延胡索[エンゴサク]を「次郎坊[ジロボウ]」と呼びました。


スミレ属は世界の温帯に400種ほどあり、うち50種ほどが日本に自生しています。
「スミレ Viola mandshurica」だけでなく、スミレ属の多くをまとめて「スミレ」と総称するのが一般的。

以下に近似の数種を紹介したいと思いますが、正直、私は殆ど見分けが付いていません。うむむ。



アリアケスミレ

有明菫[アリアケスミレ] Viola betonicifolia var. albescens
別名:小白花菫[コシロバナスミレ]

白に紫条の花かず基本ですが、もう少し紫の色味が濃い個体もあります。
スミレに似て葉が細長い。花は1.5cmくらい。

有明とは「月がまだ見えるが、空が白んで夜が明け始めている」様子や時間帯を指します。
花の色をそれに例えてこの名が付けられました。ロマンチックですね。

田のあぜや道端に普通に咲いています。



ツボスミレ

坪菫[ツボスミレ] Viola arcuata
別名:如意菫[ニョイスミレ]、コマノツメ

こちらも白に紫条の花。
葉が丸く、花はやや小型です。1cmくらいか。
茎が地面を横這いし、ところどころに根を下ろして殖えていきます。
また、時季を経るにつれ茎が斜めに立ち上がっていきます。30cmほどの高さになることも。

一説に、坪[ツボ]とは「庭」のことで、「庭に咲くスミレ」という意味だとします。
他説もあり、坪とは花の距(花の後ろに出っ張った部分)のことだとも。

別名「如意菫[ニョイスミレ]」の「如意」は高僧が持つ宝杖のこと。
杖のヘッド部分と葉の形を重ねているようです。多分、若い葉の巻いてる形をそう見たんでしょうね。
中国での別名に「如意草」とあるので、そちらにルーツのある名前なのかもしれません。


人里に普通に見られるスミレです。



タチツボスミレ

立坪菫[タチツボスミレ] Viola grypoceras
別名:坪菫[ツボスミレ]、藪菫[ヤブスミレ]

別名が同じですが、「ツボスミレ」よりも大型です。
花の大きさは1.5~2cmほどもあるでしょうか。草の中で目立ちます。

花は上品な薄紫色。中心にオレンジ色のワンポイントがあります。葉は丸い。
やや山奥に入って、林の中のあまり日の当たらない辺りに群生していることが多いです。

全体に無毛。
毛のあるものは「毛立坪菫[ケタチツボスミレ]Viola grypoceras var. pubescens」という異種になり、小型のものは「小立坪菫[コタチツボスミレ]Viola grypoceras var. exilis」。葉が厚く光沢のあるものは「艶菫[ツヤスミレ]」になります。

白花のものは、白花立坪菫[シロバナタチツボスミレ]と呼びます。(花弁に紫条はありません。)
シロバナタチツボスミレのうち、距(花の根元の、後ろに出っ張った部分)が紫色のものは「乙女菫[オトメスミレ]」とするようです。



エイザンスミレ

叡山菫[エイザンスミレ] Viola eizanensis
別名:蝦夷菫[エゾスミレ]

名前は「比叡山のスミレ」の意。

なかなか珍しいスミレです。花は1.5cmくらい。微かに香りがあります。
葉がヨモギのように裂けていて、花は薄紅色。見つけると嬉しい気分になりますね。
別名が「蝦夷」ですが、本州・四国・九州にも生えます。そして北海道には生えません。

薄暗い林内に稀に見られます。

エイザンスミレ


葉の形が似ているものに、白花の肥後菫[ヒゴスミレ]があります。
エイザンスミレとヒゴスミレの原種は、葉が裂け桃色の花の咲く南山菫[ナンザンスミレ]で、朝鮮半島や中国東北部に分布し、日本では対馬にしか生えていません。


スミレの花言葉はスミレ属全体で概ね共通していますが、エイザンスミレは姿が珍しいからか、個別の花言葉が作られているようです。


エイザンスミレには固有の花言葉が付けられていました。
エイザンスミレの花言葉
茶目っけ



子供の頃スミレの花が大好きで、秘かに庭に移植を試みたりしてたんですが。(親に残らず抜かれて哀しい思いをしました。)
大人になってみると、抜いても抜いてもゾンビのごとく生えて無限に増殖していく恐ろしい雑草でした。しかも根が深くて抜きにくいよ!
いや、今でも花は好きですが。
花が終わると丸い朔果になり、熟すと弾けて四方に大量の種をまき散らします。このため、決して滅びないのでした。

ツボスミレの閉鎖花スミレ属は小さいながら美しい花が印象的。けれど花が咲くのは春の一時期のみで、花期が過ぎると閉鎖花を付けるようになります。
閉鎖花とは、蕾のまま開かずに自家受粉して実になる花のこと。

……花の時季が終わってからも地味に種子を作り続けていとは……! 油断したっ……。



「スミレ」の名の由来説は幾つかあります。
有名どころは「花の形が墨入れに似ているから」というもの。

墨入れとは、昔の携帯用墨汁入れのこと。
けれど、特にスミレに似た形はしていません。色々なデザインがあるので、心の目で見れば似ていると言えなくもない形のものもありますが……。

他にも「隅取紙[すみとりがみ]で作った隅入れに似ているから」という説があります。
隅取紙は、一般には四角い紙の四方の角を切り取るか折るかしたものを指しますが、ここでは折ってひだを作った紙の角の一つを竿の先にくっつけてヒラヒラさせた指物[さしもの]を意味しているようです。戦の際に旗印として使われたものでした。
それが花の形に似ていると言うのですが、そもそもこの指物は「隅入れ」とは呼ばない気が。

なにしろ『万葉集』にも「須美礼[すみれ]」とあり、相当な昔からその名で呼ばれていたようなので、以上の説は怪しいのではないかと近年は言われているようです。

古代、スミレは春の山菜として食べられていましたので、摘入草[ツミイレクサ]などと呼んだのが訛ったのではないかとの説もあり、これが今は人気があるようです。

その他にも幾つも説はあるようですが、どれも確たる根拠はありません。


スミレの葉は、春の若いものを摘んで野菜のように食べます。味が良いそうですが、江戸の頃にはもう食べる習慣は廃れていたようで。どうしてでしょう? 小さくて摘むのが大変だからでしょうか。
花を砂糖漬けにしたものは、そのまま食べたり紅茶に入れたり、ケーキの飾りに使ったりします。
ただし、パンジーや匂菫[ニオイスミレ]の根や種子には毒があるので注意が必要だとか。

生薬としては「紫花地丁[シカジチョウ]」と呼ばれます。花や葉にルチンが含まれ、干した全草を煎じた汁には解毒・消炎・抗菌効果があるとされます。


スミレ属の花言葉
謙遜、慎み深い、(ささやかな/小さな/つつましい)幸せ
誠実、純潔、無垢、思慮深い
(真実の/無邪気な・あどけない/秘かな)愛

この他にも沢山あって、花の色ごとに別の花言葉が設定されていることもあります。
ですが大体、上に挙げた系統のものが多いような。

慎み深い、小さいと言うあたりは、小さな野の花と言うイメージからきているようですが、誠実・純潔・愛の辺りはギリシア神話のエピソードに因むようです。

太陽神アポロンが河の精霊[ニンフ]・イオに情欲を抱いて求愛した。しかし彼女には婚約者がいたので、その愛を受け入れるつもりがなかった……。

その後の展開には諸説あるようです。

A.怒ったアポロンが彼女をスミレに変えた。
B.拒めば婚約者ともどもアポロンに報復されるだろうと悩んだイオは、「私を人間以外のものに変えてください」と純潔の女神アルテミスに祈った。願いは聞き届けられ、イオはスミレになった。

いずれにせよ、誘惑を退けて純潔を守った女の子、のイメージなんですね。
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【2010/04/18 19:00】 | すわさき・その他
【タグ】 この花なんだ  
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