「はてなどう」「ナラカ」「円環伝承」共用。書き手は ちゃすかとすわさきの二人。
スラムドッグ$ミリオネア [DVD]
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メディアファクトリー 2009-10-23

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starインド版 ウシジマくん
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star人生には、何一つ無駄なものなどない・・ラティカがボンドガールに

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2008年の映画で、翌年にアカデミー賞受賞。日本で公開されたのは受賞後です。
他にも、トロント国際映画賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞を受けています。

インド映画だと思い込んでいたのですが、感想を書くために調べたらイギリス映画でした。(^_^;)
インド人作家(本業は外交官!)のベストセラー小説を、イギリス人スタッフが映画化したものだそうで、原作とは内容がかなり違うし、本物のインド映画に比べてアッサリ目の味わいになっているのだそうです。

それでも他の洋画や邦画に比べると濃密で、観終わった時にじんわり疲労を感じます。ああ映画を観たなぁーという満足感が得られる一本です。


クイズ$ミリオネラ。
イギリスを発祥とし、今や世界各国で放映されている人気TVクイズ番組。
一つの質問に四つの選択肢。正解すれば次の質問が出され、一定数正答すると賞金取得資格が与えられる。そこで挑戦をやめて賞金を手にするのもよし、より高額の賞金を求めて更なるクイズに挑戦するもよし。その場合、その後の質問に答えられなければ、それまでの賞金取得権も失ってしまう。
まさに一か八かのギャンブルゲームだが、クイズという形式ゆえに、運よりも頭脳、深く広範な知識と高い教養が必要とされるのだ。

ところが今、ここインドの番組において正解を重ね勝ち進んでいる18歳の若者、ジャマール・マリクは、教養などあるはずのない人間だった。
スラムで生まれ育ち、学校に行ったことはなく、後ろ盾もなく、高給な職に就いておらず、貧しくて痩せている。
なのに彼は頂点に近いところまで勝ち進んでいた。インドでこの番組が始まって以来、医者や弁護士すら到達したことのないレベルへだ。

これ以上は失敗する、これまでに得た賞金取得権を失うぞと諭されても、挑戦をやめはしない。
業を煮やした番組司会者は、親切顔をして嘘の解答を教えたが、ジャマールは惑わされず自分の解答をし、正解して、最後の質問に至った。
激怒した番組司会者は、こいつは八百長をしていると警察に通報。ジャマールは逮捕され、吊るされて過酷な拷問を受けた。

しかし、どんなに責められてもジャマールが八百長の自白をすることはなかった。彼は本当に、自分の力だけで解答していたからだ。
何の学もない彼が、どうして難しいクイズに正解し続けることが出来たのか。警察の質問に答え、ジャマールは自身を正解に導いた体験を、一つ一つ説明し始める。それは、彼の過酷で数奇な半生の物語でもあった……。

ジャマール・マリクは大都市ムンバイのスラムで生まれ育った。貧しいながらも楽しい暮らし。しかしある日、宗教的暴動が起こってスラムが焼き討ちされる。ジャマールは兄・サリームと共に辛くも逃げのびたが、家族と家を失った。

浮浪児となった幼い兄弟の後に、同じように家を失ったらしき幼女が付いてきた。サリームは邪険に拒絶したが、ジャマールは優しく招き寄せ、以降、この幼女ラティカを、妹のように可愛がった。

ゴミ集積場に流れ着いた三人は、ゴミ漁りをして暮らしていた。そこにマイクロバスが来て子供たちを集め始める。保護施設へ連れて行ってくれるというのだ。三人は喜び勇んでバスに乗り込んだ。
施設には大勢の子どもがいて、毎日食事が出され、ベッドで眠ることが出来た。施設を運営する男は子供を歌手として育てると言い、歌や踊りのオーディションを行う。
幼いながら二人一緒の将来を夢見始めていたジャマールとラティカ。ジャマールはラティカのためにもオーディションに合格しようと張り切る。
ところが、兄のサリームは恐ろしい事実を聞かされていた。運営者はヤクザの組長で、子供を街角で歌う乞食にして金を集めようとしていた。より同情を誘えるよう、両眼球を焼きつぶして盲目にしてさえいたのだ。
見どころがあるから俺たちヤクザの仲間になれ。そう言われたサリームだったが、迷った末、ギリギリで弟を救いだす。だが、この逃走の中で、ラティカだけは追手に捕まり、生き別れになってしまう。

兄弟はヤクザの支配するムンバイを離れて放浪する。数年を経たころ、観光地のもぐりガイドになって曲がりなりにも生活の安定を得たが、ジャマールはムンバイへ戻ると言い出した。ラティカを忘れたことがなかったのだ。

ムンバイに戻り、ラティカを探し当てた。商品として大切に育てられた彼女は、教育され美しく飾られ、未だ乙女だった。情熱のままにラティカを救いだそうと突進するジャマール。しかし情熱だけで現実はしのげない。サリームがヤクザの組長を銃殺した。三人は逃げて、ヤクザから奪った金でホテルに隠れた。

その夜、サリームがどこかに姿を消したので、ジャマールとラティカは二人きりで夜を過ごす。しかしジャマールは彼女の入浴を覗き見ることもしなかったし、性的に触れようともしなかった。その紳士的な振る舞いに、ラティカはますますジャマールへの好意を募らせる。二人は子供の頃のように同じ布団に入り、幸せな気持ちで眠った。

しかし幸せな時間は短かった。戻って来たサリームが、ジャマールに銃を突きつけて、女を残して出て行くよう脅したからだ。
ヤクザの組長を殺して無事ていられるはずがない。残党に狙われ、どこまでも追われて殺されるだろう。そう考えたサリームは、ムンバイを二分して支配していたもう一つの暴力団の組長に会い、手下になる代わりに守ってくれと頼み込んできたのだ。
ヤクザとして生きることを決めた彼は、美しいラティカを己のものにするという欲望を隠さなかった。
全てを悟ったラティカは、ジャマールに向かって静かに「出て行って」と告げる。
失意のまま、全てを失ったジャマールはその場を立ち去った。

そして数年が過ぎ、ジャマールは18歳になった。
電話交換手として働いていた彼は、電話番号からラティカの居場所を探し当てる。彼女は、サリームの仕える組長の情婦になっていた。もう遅いとラティカは言うが、ジャマールは諦めない。しかしヤクザの手から逃れる術はなかった。

再びラティカの居場所を見失ったジャマールは、彼女が夢があって好きだと言っていた番組、クイズ$ミリオネラへの出場を決意した。賞金も名誉も要りはしない。ただ、どこかで観ているだろうラティカへ、自分の想いを伝えるために。

全てを聞き終わった警部はジャマールを釈放し、最後の質問に答えさせるためテレビ局へ行かせる。インド中が注目するなか、番組が始まる。一方、ヤクザたちに見張られながら忸怩たる思いで番組を観ていたラティカの前に、思いがけない男が現れ……。
果たしてジャマールとラティカは幸福をつかむことが出来るのか?


ジャマールの兄のサリームは、実は原作には存在しないキャラクターなのだそうです。
しかし最も印象深いキャラクターでした。幼いころから、彼は常に弟の幸福を阻害し奪うのですが、反面で弟を救いもしている。物語の要所での彼の心理を想像してしまいます。

主人公のジャマールは、真面目で真っ直ぐなだけの人なのだけど、とにかく粘り強い。子供のころから何度も、色々なことで手に入れたはずの幸せを奪われ失ってしまうのですが、決して拗ねた生き方をしないし、諦めないのですよね。
ラティカとの大恋愛もそうですが、子供の頃の便つぼ大スター事件も凄かった。

クイズ$ミリオネラの司会者を見ると、どうにも みのもんた(日本版クイズ$ミリオネラの司会者)を思い出してなりませんでした(苦笑)。で、逆に、もしかしてみのもんたのあの番組での焦らし演出なども、元のイギリスの番組をまねていたんだろうか(だからインド版の司会者も似た感じに見える?)と思いました。どうなんでしょう?

それはともかく、非常に疑問に思ったことが一つあります。
八百長を疑われたジャマールは逮捕され激しい拷問を受けるのですが、彼はこの時点で賞金を受け取っていないのですよね。最後の問題への挑戦前ですから、賞金取得権すら持っていません。そして八百長の証拠もない。
なのになんで逮捕? しかも命に関わるような拷問されてんの?
彼が何の罪でそんな目に遭っているのか理解できなかったので、そこばかりモヤモヤと気になっていました。インドの司法ってそういう感じなんでしょうか。

インド映画だと思い込んでいたので、物語が終わった後のエンドロール、役者さん方がみんなで踊ってくれて、おお、インド映画はこうでなくっちゃと思い、大変満足しました(笑)。



この映画、インドの荒んだ社会問題を取り上げたものでもありますが、私は映画そのものより、幼女ラティカを演じたインド人少女の父親が、多額のお金と引き換えに娘を養女に出そうとしたという現実の事件の方に暗澹たる気持ちを抱きました。
娘をお金で売る、ということもそうですが、何より不快だったのが、養女に出そうとした相手のアラブ人富豪が、実はイギリスの大衆紙『News of the World』記者の変装だった、という点です。裏返せば、父親はネタを作ろうとする記者に陥れられたということでは。人間の弱さに付け込んで過ちを犯させ、囃し立てるなんて。気分が悪い。



↓原作本。私は未読ですが、レビューを見ると大絶賛の嵐です。映画とは異なり、精緻な伏線の張られたミステリー要素があるらしい。また、主人公の名前や家族、ヒロイン、物語の結末も映画とは違うそうです。
ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社文庫)
ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社文庫)ヴィカス・スワラップ著 子安 亜弥訳
ランダムハウス講談社 2009-02-20

おすすめ平均 star
star映画より落ち着いて楽しめる
star全ての子供達に。全ての大人へ。
star映画よりもいい。今年最も魅了された本。

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【2010/04/01 17:14】 | すわさき・感想
【タグ】 映画の感想  
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