「はてなどう」「ナラカ」「円環伝承」共用。書き手は ちゃすかとすわさきの二人。
グラン・トリノ [DVD]
グラン・トリノ [DVD]ワーナー・ホーム・ビデオ 2009-09-16
おすすめ平均
stars争いの種をまいたものは?
stars救いは?
starsグラン・トリノは亡き大叔父の愛車
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stars泣けるぜ・・・

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映画『グラン・トリノ』公式サイト

2008年のアメリカ映画。主演のクリント・イーストウッドが監督も務めています。
簡単に言えば、ある頑固ジジイの生き様が一人の少年を救い、男の魂が受け継がれる、と言う話。

ポーランド系アメリカ人のウォルト・コワルスキーは、頑固で偏狭な老人だ。
価値観は古く、チャラチャラした若者の風俗は嫌い。人種差別の意識も拭いされず、白人社会に割り込んできたアジア系企業や移民への偏見や嫌悪を隠さない。
男らしく強く誰にもおもねらず女子供を守り勤勉であること。そんな自身の正義を掲げ、それ以外をよしとしない。僅かな親しい友人を除き、周囲の人々はおろか、息子たちや孫にもその態度で接する。
橋渡し役だった妻が亡くなったことでその激しさは増し、葬儀が終わると息子たちは家族を連れて逃げるように帰って行ったが、むしろせいせいするとウォルトはうそぶいて見せるのだ。

そんなウォルトの自慢は、名車グラン・トリノである。今ではクラシックカーとしての値打ちが高いだろうが、彼にとってはそれ以上の愛車。フォード社の自動車工として50年間勤め上げた彼が、自分で部品を取り付けた特別品なのだ。ガレージに収め、丹念に整備してピカピカに磨き上げている。
彼にとってこのグラン・トリノは、アメリカ男児としての誇りそのものであった。

ある夜、近辺をうろつく半ばギャングの不良少年たちがグラン・トリノを盗もうと忍び込んできた。ウォルトは銃を構えて追い払うが、不良たちの中に隣家の息子・タオが混じっていた。無口で気弱な彼は、不良たちに仲間に引きずり込まれかけていたのだ。ウォルトのおかげで盗みは失敗し、タオは不良の仲間に入らずに済んだ。以降、感謝した隣家はウォルトに贈り物をしたり、親しく接してくるようになる。

アジア系有色人種に偏見を持つウォルトは渋い顔をするばかりだったが、隣家の娘でタオの姉・スーが明るく機転に富んだ気持ちのいい人間で、ウォルトは次第に隣家と交流を深め、偏見を解いていく。
彼女たちはベトナム戦争で移民してきたモン族(ミャオ族)で、姉弟の父は亡く、母と祖母と四人で暮らしていた。例の不良少年たちのように、アメリカという新天地に居場所を得られず裏社会に堕ちていく一族の男も多い。父親というものを知らない弟・タオに、そんな誘惑に屈さない男らしく正しい人間になってほしいと、スーは願っていた。

隣家の人々は、グラン・トリノ盗難未遂の罰として、タオにウォルトの家の手伝いをさせてほしいと申し出た。うじうじして男らしくないと感じていたタオに好感を持っておらず、迷惑に感じたウォルトだったが、彼に家周りの修理、庭木の手入れの仕方など、男の家仕事を仕込んでいく。
父と子のように、祖父と孫のように、師と弟子のように。二人の間に友情が結ばれていった。
手伝い期間が終わると、ウォルトはタオに就職先を紹介し、仕事に必要な工具も貸し与えた。

ところが、不良たちは仲間にならないタオが目障りでならなかった。
仕事帰りに絡まれたタオは、暴力を振るわれ、ウォルトに貸してもらった工具も失ってしまう。
それを聞き出したウォルトは、秘かに不良少年たちのたむろ場へ行くと、おびき出してひどく殴り、銃をつきつけて、二度とタオたちに関わらぬよう忠告したのだった。

だが、それで済むはずはなかったのである。
ウォルトは若いころ兵士として参加した朝鮮戦争の記憶を未だにトラウマとして心に秘めていたが、戦争がそうであるように、暴力による報復は更なる暴力を生むものだったのだ。

隣家に雨のように銃弾が撃ち込まれた。
スーが連れさらわれ、生きて帰ってはきたものの、相好の判別もつかぬほど殴られ、脚が血まみれになるほどの性的暴行をも受けていた。

タオは怒りに震え、なりふり構わずに報復に行こうとする。しかしウォルトは止めた。臨戦態勢になった敵の待ち構える場所に行けば命はないだろう。万が一勝てたとしても、残るスーたちはどうなるのか。報復には報復が返る。自身の行動がこの取り返しのつかない悲劇を呼んだことを、彼は苦く噛みしめていた。

守るべきものを守るため、男として何をすべきか。
ウォルトはある決意をした……。



ウォルトが最後に取った行動は意外と言うか、衝撃的です。
一応、病気で余命いくばくもなかったからという逃げ道も用意されてるんですが、これはこれでどうなんだろうかとも思える。
報復の連鎖を断ち切る方法は自己犠牲しかないんでしょうか?
朝鮮戦争に参加して云々と言う、イマイチ物語に溶け込んでいなかった設定も、《これは贖罪なのです》と言う逃げ道の強化なのかなと思いました。

守るべきものを守るための自己犠牲、戦いの中の死というのは、時代を超えて男のロマンなのでしょう。

全てが終わった後、グラン・トリノはタオに譲り渡されます。
古い、けれど大きく立派でピカピカのそれに乗るタオの姿は、古臭いながら色あせない男の魂、古き良きアメリカの心が、少年に受け継がれたことを象徴しているのでしょう。少年は有色人種でアメリカの参加した戦争による移民で、そうしたものをアメリカが胸広く受け入れたことを示す存在でもある。つまり《新しいアメリカ人》です。
ただ受け継がれたと語るだけでなく、人種差別や報復戦争という要素を盛り込み、老人が古い価値観を僅かに変えたとしたところは、やはり現代映画だなと言う感じでした。


余談。
エンディングでかかる「俺のグラン・トリノ~♪」とかいう歌は素敵でしたが、何故か「燃える男の~赤いトラクタ~♪」というCMソングを思い出していました。

あと、作中でウォルトがアジア系有色人種への悪口として「米食い野郎」と言ってたのが、すっごく衝撃的でした。
いや、日本人である私にとって米を食べるのは普通のことなので、米食い野郎と言われても「へ? 当たり前じゃん」としか思えなくて。そうか、文化が違うと「米を主食にする」ことが悪口になりえるのかと、目からウロコだったのでした。


朝鮮戦争、ベトナム難民、日本人(日本車企業)といったキーワードが出てきます。
私たちが白人の人たちを国に関係なくひとくくりに捉えがちであるように、彼らも黄色人種をひとくくりに見ているのだなと感じました。
それと、アメリカの家ってみんな広くてプールがあるってわけでもないのだなぁと知りました。ウォルトやタオの家は同じ形が並ぶ古い建売で、あまり広くなかったです。そしてアメリカの家には塀がない。日本人的には落ち着かない。庭も割と素っ気ない感じだと思いました。


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【2010/03/24 06:52】 | すわさき・感想
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