「はてなどう」「ナラカ」「円環伝承」共用。書き手は ちゃすかとすわさきの二人。
元は朝日新聞社の雑誌『夢幻館』に連載されていたけれど、雑誌の休刊・WEB化に伴って、WEB連載になった漫画。今なら1話から3話まで、全て無料でWEBで読める。(09/10/19まで)

【無料コミック】人造動物園(Yahoo!コミック内)


主人公は、大内花梨という女子高校生。
声優を目指しているが看護師の母親に反対されているため、専門学校の学費を自分で稼ごうと、「大神官亭」なる喫茶店でバイトを始める。

ところが、その喫茶店が実に奇妙で、外観も内装も自在に変わるし、長髪美形のマスターの背には白い翼が広がっているし、ウェイターは狐のような尻尾と耳をはやした美少年だし、お客はどう見ても異形な感じで、でも賑やかで楽しげで忙しいのだった。そしてマスターたちも客も、なにやら花梨に対して含みがあるよーな…?


ああ、山田ミネコだなぁ、という漫画だ。
山田ミネコは、いわゆる《花の24年組》と呼ばれる、戦後の少女マンガ革命期に注目された少女漫画家たちの一人。様々な雑誌・出版社を渡り歩きつつ、《最終戦争シリーズ》《パトロールシリーズ》等の大河SFファンタジーを描き続けて、根強いファン層を得た。

しかし強いアレルギーが出て体調を崩すようになり、次第に作風がデフォルメ化していき、ついに商業の仕事から姿を消して、十年ほどは同人誌で活動していた。
近年、《最終戦争シリーズ》や《ふふふの闇シリーズ》の文庫化をきっかけに、再び書き下ろし単行本やWEB漫画で商業誌の世界に戻ってきた。


山田ミネコの漫画には、《孤独》がある。そして、そこから誘われる、ぽっかりと開いた底しれぬ穴のような恐ろしさがある。
商業誌デビュー作(デビュー自体は貸本用書き下ろし)からして、一人で留守番をする少女のもとに寸足らずの異形が現れ、お前は友達にも両親にも愛されていない一人ぼっちだと、孤独の幻影に捕らえようとする話だ。

孤独を描くエピソードは実に数多い。そして孤独と幻影、異界は常に隣り合わせてある。異界行きは魅力的ではあるが、現実には消失であり、死にも通じる。孤独を抱える人間を飲みこもうとする、幻想の穴だ。

死は、時にはもっとはっきりした形で描かれる。
死を恐れ妖魔と化した女たちは男たちの生気を吸い、石のようなミイラに変える。
女たちの夢に飲まれての死は幻想的ではあるけれど、残されたミイラは醜悪で冷たい。
死は容赦なく訪れ、命をもぎ取っていく。


反面、山田ミネコの漫画には、恐ろしい事象を強くデフォルメした滑稽さも常にある。
孤独に誘う異形は可愛くてコロコロした姿をしているし、生気を奪う妖魔は、愛らしくごく普通の少女の面も持っている。少女たちの心臓をえぐりだした、魔に魅入られていた美貌の王子が、物語終盤には子供っぽい性格のギャグメーカーになっていたりする。

また、主人公が生まれる前からの《選ばれた超能力者》で、問題をその超能力で一挙解決してしまったり、人殺しの恐ろしい敵に何故か好かれまくって、敵を愛の奴隷…というより、子供のように従えてしまう、ご都合的とも言える展開も珍しくない。

が、これが山田ミネコ節というものだ。


この『人造動物園』にも、そんな山田ミネコ節が濃く表れている。
好き嫌いは分かれるだろうけれど、私は、ああ山田ミネコだなぁと、妙な安心感を得たのだった。


それはそうと、この漫画を見ていると、とにかく既視感を覚えて仕方がなかった。
山田ミネコは一時期、小説家として活躍していたころもあるのだけれど、その中の一作、《裏側の世界シリーズ》一作目『カナアンの竜兄弟』に、すごく似ている。喫茶店のバイトの様子や、実は最初から仕組まれていて、やがて異世界へ連れて行かれる展開や、恋人にはそっくりの兄弟がいて性格が悪いところや。
……焼き直し、ということなんだろうか。

もっとも、この漫画家さんの作品の殆どが、どこか共通した設定を持っていて、似たような雰囲気なのだけれど。


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 人造動物園 壱


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ここはゲーム『魔導物語』(ぷよぷよ)ファンサイトのブログでもあるので、以降はそれに引っ掛けた話。
判らない人は無視してください。

ところで、『魔導物語』のサタンやシェゾが、実は幻想小説『闇の公子』のパロディでもあったと知って、私の頭に真っ先に浮かんだのは、山田ミネコの漫画だった。
彼女の漫画には異能の力を持つ長髪美形が数多く表れ、耽美で冷酷で恐ろしい。けれど、彼らはユーモラスにも描かれ、ケーキをぱくぱく食べたり、特定の少女に対してだけ、幼い子供のように従ってしまったりする。
最初期『魔導』のサタンのイメージは、私の脳内では山田ミネコの漫画のキャラに近くなったのだった。
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【2009/09/12 00:44】 | すわさき・感想
【タグ】 漫画の感想  
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単行本化!
金魚
2010/04/15、○天から新入荷メールが来ました。
○陸書房シリーズのに似てるんですね・・・webに表紙とか全然出てこないのですが、即注文してしまいました。手元に届くのが楽しみです。

Re: 単行本化!
すわ@管理人
こんばんは。書き込みありがとうございます。
『人造動物園』、紙の単行本になるんですか! めでたいです。
いつものように書き下ろしのあとがきが付くんでしょうか。


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コメント
この記事へのコメント
単行本化!
2010/04/15、○天から新入荷メールが来ました。
○陸書房シリーズのに似てるんですね・・・webに表紙とか全然出てこないのですが、即注文してしまいました。手元に届くのが楽しみです。
2010/04/15(Thu) 13:30 | URL  | 金魚 #-[ 編集]
Re: 単行本化!
こんばんは。書き込みありがとうございます。
『人造動物園』、紙の単行本になるんですか! めでたいです。
いつものように書き下ろしのあとがきが付くんでしょうか。
2010/04/16(Fri) 20:08 | URL  | すわ@管理人 #r.0hNWwI[ 編集]
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