「はてなどう」「ナラカ」「円環伝承」共用。書き手は ちゃすかとすわさきの二人。
今回はいつにも増しての与太話です。
『テイルズ オブ ジ アビス』とは全く無関係の、ある人気漫画。
それを読むと、『アビス』に含まれる、あるシチュエーションの記憶を強く刺激されるんで、なんだか気になって仕方がない、という話。


最初に、ちょっと余談から。
大昔、『ゴーゴーヘヴン!!』(秋田書店プリンセスコミックス/著:山田圭子)という少女漫画がありました。
細かいところは忘れちゃいましたが、確か、内気なシスター見習いの女の子と魔界のプリンスの、はちゃめちゃラブコメディだったと思います。
主人公はミッション系の女学園に通う16歳の少女・白雪。おとなしくて苛められがちで友達もいません。ある日トラックに跳ねられ死んでしまいますが、葬儀の日に奇跡的に生き返ります。まさに、白雪姫のように。
実は、地獄の閻魔大王の孫・プリンス(この時点では小学生くらいの少年の姿。後に青年姿も披露)が彼女に惚れ、特例として49日間だけ生き返らせてくれたのです。
49日の間は、白雪は無敵。パワーがみなぎって超人的身体能力さえ発揮できちゃう。言動も以前より少し強く?
そしてプリンスは、タイプの異なるイケメン三人を下僕に学園の理事長として乗り込んできて、俺様な言動で白雪を見守ったり迫ったり贔屓して、周囲の嫉妬をあおるのでした。
当時、中堅の人気で、長期連載化し(月刊誌連載で単行本13巻)、ドラマCDも出ていたようです。

その単行本に、作者によるトークページがあって、こんなことが書いてあったと記憶しています。
この漫画は元々、『幽☆遊☆白書』のコエンマ×幽助の、ボーイズ・ラブ妄想から出発していると。

ご存知の通り、『幽☆遊☆白書』は週刊少年ジャンプ連載、TVアニメ化もした大ヒット少年漫画です。不良少年・幽助が交通事故死してしまい、閻魔大王の息子・コエンマ(幼児姿で登場。後に青年姿も披露)が、生き返るための試験を課すところから始まる、妖怪バトル漫画。

そんなわけで、原案段階では、白雪はヤンキー少女という設定だったそう。

けれど実際の漫画を読みますと、『ゴーゴーヘヴン!!』と『幽☆遊☆白書』は似ても似つきません。
主人公の交通事故死と蘇生から始まるとか、閻魔大王のジュニアが手を差し伸べてくれるなんて点は、確かに共通していますが、「あー、言われてみれば…」程度のものです。
作者の告白がなければ誰も気付かなかっただろうくらい、全く異なるストーリー、味わいの漫画に仕上がっていました。


こういうことって、創作の世界では割と普遍的だと思うのです。
映画やドラマ、小説なんかを見て、面白かった、素敵だと思う。
そして「こんな話を自分も書きたい」と思ったり、「自分だったら、こんな話にする」と妄想したりする。一つだけでなく、幾つもの既存の物語の好きな要素を組み合わせて、変形・膨張させていく。
それらを捏ね回し、熟成させて、自分の物語を編み出すのです。

これは昔から、物語作りの方法論の、基本の一つだと思います。
『まんが道』にも、手塚治虫が「漫画を描くための勉強として映画を沢山観なさい」と教えてくれたとか、映画を見た後それに刺激されて漫画を描いたとか、描かれておりますし。
(ちなみに、手塚治虫の代表作の一つ『ジャングル大帝』は、ディズニー映画『バンビ』の影響でできた作品だとも言われています。……手塚の死後、ディズニー側が『ジャングル大帝』のパクリ(と、ディズニー側は認めないけれどアメリカ人も普通に認識している)『ライオンキング』を作ってるわけで、いろいろ面白い。)

元ネタの形が残りすぎちゃってると、良くてオマージュ、悪ければ「パクリ」や「盗作」になってしまいますが、十分に熟成され換骨奪胎されていれば、それはもう新しく生まれた物語。
『ゴーゴーヘヴン!!』の例は、それを教えてくれると思います。


さてさて。
話を最初に戻します。
最近、ある漫画を読むと、『アビス』に含まれるある要素が思い出されてならず、自分がその要素を好きなので、ドキドキザワザワしてやみません。

この漫画家さんは、もしかして『アビス』が好きなのかなぁ?
ただの偶然で、『アビス』を知らないとしても、もし知ったなら、それが萌えシチュってことだろうから、やっぱりその要素にハマるのかなぁ。

全体的に見れば、その漫画は『アビス』とは似ても似つきません。全く違うジャンル、キャラ、筋立てです。
客観的に考えるなら、私がなんか変なのだろうとも思います。
こんな風に感じちゃうのは、その漫画と『アビス』、どちらに対しても失礼なのかもしれません。

なので、かなり前からこう思ってたんですけど、モダモダするだけで主張できませんでしたが。
まあ、与太話としてならいいかなぁと、吐き出してみることにしました。(^_^;)
話半分でお気楽にお付き合いいただければと思います。

その漫画とは、白泉社の『花とゆめ』で不定期連載されている『リーゼロッテと魔女の森』(著:高屋奈月)です。

リーゼロッテと魔女の森 1 (花とゆめCOMICS)リーゼロッテと魔女の森 1 (花とゆめCOMICS)
(2012/04/20)
高屋奈月

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そして、この漫画に感じる『アビス』的な要素とは、《ガイとルークの関係性》です。
以下、いわゆる《箇条書きマジック》を起こしてしまいそうですが、ガイルクっぽいなぁと思った部分を羅列してみましょう。

●《主人公》は、公爵家の子女。
 ・『アビス』の主人公・ルークは公爵家の息子。『魔女の森』の主人公・リーゼロッテは公爵家の娘
●公爵家には優秀な跡取りがおり、《主人公》との間に葛藤がある。
 ・ルークにはオリジナルルークであるアッシュ。リーゼロッテには腹違いの兄であるリヒャルト
●《主人公》は、物心つく前から、公爵家の屋敷に軟禁されていた。
 ・ルークは身を守るためという名目で軟禁。リーゼロッテは権力闘争的意味から「存在しないもの」とされ、自室の周辺と庭園くらいしか自由な行き来を許されていなかった
●軟禁されていた《主人公》は、外の世界を知らず、極度に世間を知らない。
 ・ルークは周囲の思惑と本人の怠惰から。リーゼロッテは、自分は無知でいた方が権力闘争に巻き込まれず幸せに暮らせると考えて、あえて学ぼうとしなかった
●《主人公》の出生には秘密がある。(普通の人間ではない。本当の意味で公爵家の人間なのかあやふや。)物心つかない頃、人に抱きかかえられて屋敷に連れてこられた。
 ・ルークはレプリカ(人造人間)。リーゼロッテは、まだ作中で明言されていないが、大魔女ヴァーテリンデの助けで生き得たか、ヴァーテリンデ自身の産んだ娘か、その作った人形か、とにかく魔女と関わる存在ではないかと推測
●《主人公》の傍には、ほぼ唯一の心許せる相手である《従者》(世話役/使用人)がいる。
 ・ルークにはガイ。リーゼロッテにはエンリッヒ
●《従者》は《主人公》より何歳か年上。《主人公》と初めて出会った時、14、5歳くらい。実は剣の達人でもある。朝起こしに来てくれたり、一緒に本を読んでくれたり、いつも微笑んでいて、保護者のように世話をしてくれる。《主人公》にとっては優しく温かな存在。
●しかし、《従者》の出自は不明である。彼が話したがらないので、《主人公》は彼の過去をあえて訊いていない。
●《従者》は、多くの死にまみえた凄惨な幼少期の体験を持っている。暗い目的で《主人公》の世話係になった。
 ・ガイは、ルークの父に家族を殺された復讐者だった。エンリッヒは、まだ作中で明言されていないが、暗殺者的な存在らしく読み取れる。
●《従者》は、上記の理由から当初は《主人公》に心底の好意を抱いておらず、偽りの笑みで接していたが、無邪気な《主人公》の世話をするうちにほだされ、心からの笑みを見せるようになり、命をかけた忠心さえ抱く。
●屋敷の外の世界に憧れる《主人公》に対し、《従者》は、いつか自分が連れていくと約束する。
 ・『アビス』の場合、ドラマCDにそうしたエピソードが見える
●仮初めながら平和だった屋敷での暮らしは、《暗殺者》の突然の乱入で崩れ去る。
 ・ルークの前には「美しき暗殺者」ティアが、リーゼロッテの前には正体不明の刺客・ヴィルヘルが現れる
●多くの命が失われる大事件(謀略)が勃発。命を奪われるはずだった《主人公》は助かるが、罪を着せられ処刑されそうになる。
 ・ルークはアクゼリュス崩落。後、犯人扱いで処刑されかける。リーゼロッテは、暗殺者が来て彼女を殺そうとし、屋敷の使用人たちの多くまでを殺す。後、その事件は兄リヒャルトを暗殺しようとした彼女の謀略という扱いになり、処刑か、僻地での軟禁かを選ばされる
●事件の後、《主人公》は、それまでの《無知で人形のようだった自分》から変わろうと決意。何でも自分でやり、経験しようと、無駄に意欲的な性格に変貌する。
●《主人公》は、普通とはちょっと違う綺麗な色の長い髪を持っていたが、決意の後、自らナイフで切り落とし、以降は短髪になる。
 ・ルークは「焔」に例えられ王族の証でもある赤い髪。リーゼロッテは母に由来するという飴色の特殊な髪
●《主人公》と《従者》のどちらかが死に追いやられる。彼は手の届かぬ彼岸に去って生死不明になるが、去り際に再会の約束を残す。「二年後」に約束を果たして帰ってきたが、実質一度死んでおり、元の彼とは異なっていた。その意味で「帰ってこられなかった」。
 ・ルークは不治の死病を得て地核に去り「必ず帰る」と約束。アッシュに吸収された記憶という形で帰る。エンリッヒは刺客からリーゼロッテを守って失血死するが「必ず迎えに来る」「必ずリズのところに戻ってくる」と約束。冥界の川に流れ去り、魔女ヴァーテリンデの力で傀儡[くぐつ](人形)となって帰ってくる

……と、いう感じです。
どーでしょうか。(と、訊かれても困るでしょうけど 苦笑)

ちなみに今、『魔女の森』の物語は、エンリッヒ(淵月)がリーゼロッテとの屋敷時代の記憶をすべて奪われてしまい、皮肉で冷たい性格に変貌してしまうという展開に突入しています。二人の間に積み上げた大切な思い出が失われ、否定されて、リーゼロッテは傷つくけれど、彼に愛情を示し続ける。淵月も少しずつほだされる様子を見せ始めて……みたいな。

これに類似するエピソードは『アビス』本編には存在しません。しかし、実はガイ×ルークの同人二次創作では割と見かける、準定番くらいのネタだったりします。
ガイがルークと出会って以降の記憶を封印される、または退行して14歳に戻ってしまい、復讐心にたぎっていた頃の皮肉で冷たい性格になって、ルークを傷つける。しかし結局、もう一度ルークにほだされていく、と。

そんなわけで、この展開を見たとき益々、この漫画家さんは『アビス』が好きなんじゃなかろうか、それも、同人二次創作を読んじゃうレベルで好きなのではなかろーか、なんて思ったものです。
……尤も、女性作家による同人二次創作で好まれるシチュエーションというのは、多くが、少女マンガの定番シチュエーションでもあるわけです。なので、ただ、それだけのことなのかもしれません。
全ては偶然に過ぎない。私の思い込み。妄想過多。

妄想ついでに。
エンリッヒの傀儡[くぐつ]としての新しい名前は「淵月[エンゲツ]」。ドイツっぽい世界観なのに何故か漢字。
『アビス Abyss』は和訳すると「深」。で、ガイは「弧閃」という技がお祭りゲームでも定番で使われてたり。あと、シンクがガイにカースロットかけた時「あいつは傀儡[くぐつ]にした」と言ってたなぁ。
って、これは我ながら白けるレベルのこじつけですけど。絶対関係ない(笑)。


『アビス』の物語は、「ガイとルーク」の視点で見るなら、悲劇に終わっています。
ルーク自身は帰ってこられなかった。物語はそこで終わる。
しかし『魔女の森』の方は、二年後に「彼」が帰ってきたところから始まる物語です。
色々なものが失われて取り返しは付かない。けれど、失われていないものも確かにあって、どうにか、また積み上げていこうとする。
多分これから、エンリッヒの過去バレ、リーゼロッテの出生の秘密バレといった、暗重い真実の暴露が襲ってくるんでしょうけども。
きっとガイとルークみたいに、それでも「一緒に行こう」という道を選択するんでしょうね。
同じ《幼なじみの主従》でも、同性と異性という差がありますから、ルークたちとは違うところに着地していくんでしょうけど。

この漫画家さんの過去作を見るに、最後は主人公が報われて幸せになるハッピーエンドなのは間違いないと思われますので、そこは安心しています。
なんとなくガイとルークを思い出さされるから猶更、この漫画の主人公たちには幸せになってほしいなんて思ったりするのでした。






……ただ、この漫画で唯一不満なのは、主人公の性格だったりして。
理論武装しすぎなんだよなぁ……。

この漫画家さんの過去作、『フルーツバスケット』や『星は歌う』のヒロインのどちらも、過去に対人関係でとても辛い目に遭っていて、生活に苦労していて、でもそれを乗り越えて元気に笑っている、綺麗で美しい心の持ち主でして。リーゼロッテもその系統なんですが、過去作の主人公たちを飛び越えて、なんか変な領域に到達しちゃってる感じで。

例えば。リーゼロッテはエンリッヒが好きで、執着してて、ずっと一緒にいたいと思っている。
けど、彼をそうまでして縛り続けるのはエゴなんじゃないか。彼を不自然な形でこの世に留まらせ続けているのは、彼にとって本当に幸せなのか、という命題が提示されます。
普通の主人公ならグダグダ悩みますよね。場合によっちゃ一巻以上かけて悩むのかもしれない。
しかしリーゼロッテは悩むの数コマ。
すぐさま力強く笑って、そうだエゴだ、その何が悪い、彼は自分の好きなところに行っていい、自分に縛る権利はない。しかし彼が自分の傍にいたいと思うことを望むし、その努力は惜しまないと豪語するのです。

グダグダ悩んでも、最後にはそういう結論に達するものでしょうし、それが正解なんだと思います。結論自体には共感します。
でも、悩む間もなく最初から正解を羅列され、「私は過去に十分辛い体験をした。今後はみっともないところは全く見せません!」的にされちゃうと、キャラに共感しづらいんですよぅ。
一応、そんなリーゼロッテに周囲が怒ったり、ギャグっぽく叩いたりといった描写が入れられて、「こいつの言動おかしいぞ」的に突っ込んでバランスを取ろうとはしてるみたいなんですけど。弱い。

もっと痛々しくモラトリアムしてもいいと思います。傷つかないための理論武装でがちがちな鎧を固めているように見えます。それとも、グダグダ展開を描くのがお辛いのでしょうか。(しんどい展開って、描く方もパワーを吸い取られるものでしょうし。)

今後、『アビス』で言うところの《卑屈ルーク》展開は来るのかなぁ?

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ナラカの拍手を押してくださった方、ありがとうございました!
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【2013/01/10 18:00】 | テイルズ系の話【レス含】
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