「はてなどう」「ナラカ」「円環伝承」共用。書き手は ちゃすかとすわさきの二人。
ラプンツェル

ラプンツェル Valerianella locusta
別名:野萵苣[ノヂシャ]、マーシュ、コーンサラダ、フェルトザラート

日本ではハーブ扱いで、栽培品種名「プチレタス」「マーシュレタス」「サークルリーフ」などの名でも流通しているようです。
標準和名は野萵苣[ノヂシャ]ですが、「ラプンツェル」の方が面白いかと思うので、こちらを主名に扱います。

ラプンツェルオミナエシ科ノヂシャ属の越年草。
草丈10~30cm。花期は春から夏とされますが、自分の印象では四月末~五月頭。
花は径2mm程で球状に集合し、綺麗な浅葱色をしています。
茎は又状に分岐。ちょっぴりミミナグサを思いだす感じです。

湿り気のある場所を好み、田畑の畔などに見られます。
写真は河原の水路脇で撮影しました。近所に自生していることを知らなかったので、見つけた時は嬉しかったです。


地中海原産の帰化植物です。江戸時代にヨーロッパから長崎に持ち込まれ、野菜として栽培されていたものが野草化したのだとか。
日本では雑草でしかありませんが、ヨーロッパではサラダにする野菜として栽培され、よく食べられています。(基本的に、薹[とう]が立って花が咲く前の根生葉を食べます。)
癖が無くて食べ易く、ほんのりヘーゼルナッツの香りがあるとか。
栄養価が高く、なんとレタスの3倍のビタミンC、B6、B9、ビタミンE、β-カロテンを含むんですって。

思えば和名「野萵苣[ノヂシャ]」からして「野に生えた萵苣[チシャ]」の意味です。
萵苣とはレタスの和名。
レタスはキク科ですし、見た目からして全く違う植物なのですが、根生葉の状態だと小さいながら(玉にならないタイプの)レタスにちょっぴり似ている事と、同じようにサラダにして食べる事からそう名付けられたようですね。

この草、英語では主に「Corn salad [コーンサラダ](穀物畑のサラダ菜)」か「lamb's lettuce [ラムズレタス](羊のレタス)」と呼ばれます。これらの名は、この草が(身近な食用植物でありつつも)畑に生える雑草であったことを示しており、店で売られるようになったのは1980年代に入ってからとのこと。日本で言うとウドやフキのようなものなんでしょうか。
フランスでは主に「mâche [マーシュ](歯ごたえのあるもの?)」、ベルギーでは「salade de blé(小麦畑のサラダ菜)」、ドイツでは主に「Feldsalat [フェルトザラート](野のサラダ菜)」と呼ばれています。

各国それぞれ複数の別名がありますが、ドイツでのマイナーな別名に「Rapunzel [ラプンツェル]」があるんですね。

ラプンツェルの花ご存知のように、ラプンツェルはドイツの『グリム童話』にある、塔に閉じ込められた髪長姫の名前でもあります。
今年の春にディズニーでアニメ映画化もされましたから、知名度は更に上がっていそう。

妊娠した母親が魔女の畑の立派なラプンツェルをどうしても欲しくなり、盗んで食べてしまう。生まれた娘は「ラプンツェル」と名付けられ、魔女の娘として異界に暮らすことになるのです。


豊かな畑を持つ醜い老魔女は、黄金リンゴの果樹園を持つ美しい女神と同一の存在です。神は生命と死、双方の面を持つのですから。
世界各地の多くの民話や神話で、生命のリンゴを食べた女が神の子を生むように(日本民話で言うなら、川を流れてきた桃を食べた婆が桃太郎を生んだように)、女神の園のラプンツェルを食べた女は小女神を生みます。(逆説的には、神の申し子なので特別な出自でなければなりません。)
神の子ですから、女神(魔女)が自分の子として異界へ連れ去ってしまいます。

さて。
女神の園の食物は、黄金のリンゴでも桃でも何でもいいわけで、必ずしもラプンツェルでなければならない訳ではありません。
実は、この系統の民話は本来ドイツにはなく、イタリアやフランスに主に伝えられていたもの。そして、そちらでは母親が盗み食いする野菜は、概ね「パセリ」だったのです。

パセリちゃん(ペルシネット)が活躍するフランスの再話文学を基に、パセリをラプンツェルに変えた小説を書いたのはフリードリッヒ・シュルツという十八世紀のドイツ人です。
ドイツ文化の素晴らしさを知らしめる意欲に燃えるグリム兄弟は、この小説をドイツ独自の民話を基にした再話文学だと思い込み、自分たちなりに「簡略化して民話らしい形に戻して」童話集に加えたのだと言われます。うっかりさんですね。

シュルツが何を思ってパセリをラプンツェルに変えたのかは判りません。
料理の付け添えにする野菜、という点が似ていたからなんでしょうか?

パセリ(またはウイキョウやセロリ等のセリ科の香草)は古代ギリシアやローマでは聖なる植物の一つとして扱われていたようで、女神の園の野菜として相応しいのですが(『オデュッセイア』に出てくる小女神カリプソの島にはパセリ(またはセロリ)とスミレの花が咲いていたとされる)、ラプンツェルはどうなのか。
ただ、花が可愛らしいのは確かですよね。
シュルツは香り高く魔力持つ《パセリ》よりも、癖がなく大人しい《ラプンツェル》の方が好みだったのかもしれません。

『ラプンツェル』に関しては民話想で扱っています。宜しければ、物語の詳細をそちらでご照覧下さい。イタリアやフランスの類話も読めます。


ラプンツェルの花言葉
約束を守る
粘り強い性格

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【2011/06/10 00:48】 | すわさき・その他
【タグ】 この花なんだ  
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2013/11/18(Mon) 18:49 |   |  #[ 編集]
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