「はてなどう」「ナラカ」「円環伝承」共用。書き手は ちゃすかとすわさきの二人。
セキショウ

石菖[セキショウ] Acorus gramineus
別名:石菖蒲[イシアヤメ/セキショウブ]、根絡[ネガラミ]、川菖蒲[カワショウブ]

サトイモ科(ショウブ科)ショウブ属の多年草。水辺に生えます。
北海道除く日本~中国~ヒマラヤまでの、東アジアの亜熱帯・暖温帯に分布。
葉の長さ20~50cm。大きなニラ程度の幅と長さです。先の尖った細長い形と硬さが剣に例えられます。色は濃緑で艶やかな光沢があり、品のいい香りあり。

セキショウの根根はエビの背のようにごつごつと節くれだち、時に地表に裸出して横ばいし、そこから出したひげ根を地中に伸ばします。このひげ根で岩に絡みついて生育することも。

花は、春に淡黄色の肉穂花序[にくすいかじょ]をつけますが、地味です。学名の「Acorus」自体、「装飾的でない=地味」という意味だったりします。



名の由来は、中国名「石菖蒲」の簡略化。
中国名「石菖蒲」の由来は、石に根を絡みつかせて生育する「菖蒲[ショウブ]」だから。

現在、菖蒲[ショウブ](Acorus calamus)と呼ばれている草は、石菖[セキショウ](Acorus gramineus)と同じサトイモ科ショウブ属で、葉の長さ80cm、葉の幅1~2cmのもの。やはり水辺に生え、肉穂花序はセキショウより太い。セキショウの大型版という感じですね。

菖蒲 (しょうぶ) 写真集(季節の花 300)

ショウブとセキショウは混同されているところが色々あります。
生薬の「菖蒲」はショウブの地下茎ですが、実はセキショウの地下茎も同じく「菖蒲」として扱われています。
いえ実は、セキショウの方が中心的に、生薬「菖蒲」として使われているのです。

中国・明の王象晋による植物誌『群芳譜』によれば、「菖蒲」と呼ぶ草は四種類あり、その一つが「石菖蒲」で、薬用・食用として有用なのはこれだけとのことです。
ちなみに、ショウブはこの「菖蒲」グループの一つで、「白菖」と書かれてあります。

節のある根を掘り出し、葉とひげ根を取って洗い、ぶつ切りにして陰干しにします。
煎じて飲むのですが、精神状態を良くし頭脳を明晰にすると言われていて、健忘症や躁鬱病、精神分裂病に効くとされています。(要は、頭がスッキリするということらしい。視力がよくなると言う時もあります。セキショウの露は目の薬、という俗信もある模様。)
その他、てんかん、リューマチ、腹痛に効くとか。
また、煮出したものをお風呂に入れると、血行が良くなり、打ち身・捻挫・皮膚のかゆみが癒されます。

五月五日の端午の節句に菖蒲の葉を入れた湯に入ると健康になるとて、今では季節ものとしてスーパーでショウブの葉が売っていたりしますが、昔から、ショウブの薬効は良く知られていたようです。

さて。
端午の節句に、菖蒲や蓬[ヨモギ]の葉をまとめたブーケや薬玉を軒端に吊るしたり身につけたりすると、病魔を退けて健康に過ごせると言う。
この慣習は中国から移入されたものです。
ところが例によって、元々の中国で魔除けに使われていた「菖蒲」は、必ずしもショウブ(Acorus calamus)ではなく、むしろセキショウ(Acorus gramineus)の方だったのでした。

前述したように、セキショウもショウブも中国では「菖蒲」グループ。それで中国の慣習を日本に移入する際、これらが取り違えられたようなのです。
似た草で同じように芳香がありますので問題なかったのでしょう。

とは言え、魔除けになると言われたほどのスーパーハーブだったのに、お株を奪われ日本での知名度が限りなく低くなったセキショウは、ちょっと気の毒ですね。

セキショウの花言葉は無いようです。
…本来なら誰もが知っている有名ハーブの筈なのに、花言葉もないとは……。


余談1。日本ではお馴染み、端午の節句にショウブ(またはセキショウ)の葉を入れた菖蒲湯に入る慣習。これも中国の端午の節句に因みますが、実は中国では浴蘭節とも呼んで「蘭湯」に入るとしていたものを、日本移入の際、アレンジして菖蒲に変えたのでした。なお、蘭湯の蘭とは佩蘭、即ちキク科の藤袴[フジバカマ]のことです。秋の七草のひとつですね。




ところで、私は「菖蒲」と言うと紫の大きな花の咲く「花菖蒲[ハナショウブ]」をイメージしてしまいます。
恥ずかしながら、長いことショウブとハナショウブを混同していたものでした。
ハナショウブはアヤメ科アヤメ属で、ショウブとは全く別の草です。

ハナショウブ

花菖蒲[ハナショウブ] Iris ensata
別名:花菖蒲[ハナアヤメ]

アヤメ科アヤメ属の宿根草。草丈1m前後。シベリア、中国北部、朝鮮半島、日本に自生する野花菖蒲[ノハナショウブ]を原種とし、一千以上の園芸品種があるとされます。
植物学上は区別されていますが、俗には、アヤメ属に含まれるよく似た花、アヤメ、ハナショウブ、カキツバタ、イチハツ等を総じて「アヤメ」と呼ぶことも。

花を見れば一目瞭然、アヤメ属とショウブは全く違います。
ところが。
漢字で「菖蒲」と書いて「アヤメ」とも読みます。そして前述の通り、セキショウの別名が「イシアヤメ」だったりもするのです。えええ?

ここにまた、ややこしい事態が潜んでいます。
実は「アヤメ」とは本来、ショウブの日本での古名なのでした。

『万葉集』や『古今集』などの古典に「あやめ」「あやめぐさ」とあるのは、ショウブのことです。
ショウブが剣状の葉を整然と並べて群れ生えている様子を「文目[あやめ]」(布の織り目。また、そのような幾何学的な模様のこと)に見立てたそうで。

万葉の頃に「あやめ」と読んだ「菖蒲」が『枕草子』では「しょうぶ」と読まれていて、この頃にはもう名前の交代が起きていることが判ります。
アヤメ属の花を「花アヤメ」「花ショウブ」と呼ぶようになったのが室町時代頃。葉や根茎、生育地がショウブに似ているからでしょうか。
アヤメ属にはアヤメ、ハナショウブ、カキツバタなどの種類がありますが、区別はあまりされずに曖昧だったようです。

植物学上の「アヤメ」は学名「Iris sanguinea」。
花弁の基部に、派手な黄色と白の虎斑[とらふ]模様(文目[あやめ])があり、これが名の由来だと言われることがありますが、アヤメは元々ショウブのことだったのですから、この説は適切ではないかもしれません。
他方、漢女[あやめ](綾錦の製造技術を持つ帰化人系の女性)が名の由来だとする説もあります。

あやめ Iris sanguinea(私の花図鑑)

なおアヤメの中国名は「溪蓀」。前述の明の『群芳譜』に、「菖蒲」グループの一つとして名が挙げられています。
同時に挙げられている呼称は「水蒲」ですが、生えるのは谷間や窪地(渓)であって水辺とはされていません。実際、アヤメは湿地ではなく、水はけがよく日当たりのよい場所に生える草です。
ノハナショウブならば湿地に生えるのですが、こちらは「菖蒲」グループに入れられていないみたいです。(そもそもアヤメと区別されていない?)

セキショウは生薬として使われますが、アヤメは全草に毒があり、嘔吐・下痢・皮膚炎を起こす可能性があるので注意です。

キバナショウブ

上の写真は黄菖蒲[キショウブ]。ハナショウブの一つとされるアヤメ科アヤメ属、ヨーロッパ原産の帰化植物。草丈80cm前後。
ハナショウブの仲間に黄色い花は他になく、なかなか美しいので愛されますが、水辺にガンガン増えて水路を塞ぐ雑草でもあるので、注意が呼びかけられています。


花言葉
ハナショウブ
あなたを信じます
優雅、優しい心、優美な心
嬉しい便り、伝言
心意気
忍耐

見事にバラバラ…。

キショウブ
復讐
私は燃えている
消息
幸せを掴む、信じる者の幸福
友情

一転して、何だか昼ドラ的な花言葉です。

アヤメ
嬉しい便り、吉報
愛、あなたを大切にします
私は燃えている
消息

ハナショウブとキショウブと同じ花言葉が混じっています。やはり区別されていない模様。





最後に、アヤメ科の花をもう一つ紹介。

チリアヤメ

智利菖蒲[チリアヤメ] Herbertia amoena
別名:ハーベルティア、アロフィア

アヤメ科チリアヤメ属の宿根草。
チリやアルゼンチンなどの南米原産で、日本には大正時代に渡来。
園芸品として扱われていて、野草として帰化しているわけではないらしいですが、うちの庭にある年 突然生えて広がってしまいました。(誰かの靴に種が付いていたらしい。)なので自分の感覚では野草です。

球根植物ですが、罌粟[ケシ]のように、細長い実の中に細かい無数の種が出来て(罌粟種よりずっと大粒)、それでウジャウジャ増えます。
草丈10cm程度、花は直径3cm。朝咲いて夕方には閉じる一日花で、毎日新しく咲きます。

チリアヤメ三弁の花弁が面白いですよね。
写真だと白っぽく褪せたように写ってしまいますが、本物はもう少し深い色合いです。

花の後ろに映っている、緑の縦長のものが実。罌粟坊主にちょっと似ています。


チリアヤメの花ハナショウブやアヤメと同じく、大きな外花被片を三方に開き、中心に小さな内花被片を三角形に立て。併せて六枚の花弁を持っています。





チリアヤメの花言葉は無いようです。
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【2010/06/01 22:50】 | すわさき・その他
【タグ】 この花なんだ  
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