「はてなどう」「ナラカ」「円環伝承」共用。書き手は ちゃすかとすわさきの二人。
ガガイモ

鏡芋/蘿藦/羅摩/芄蘭[ガガイモ] Metaplexis japonica
別名:鏡草[カガミグサ]、乳草[チチクサ/チクサ]、草パンヤ[クサパンヤ]、ハンシヤ、ジガイモ、カガライ、ガガラビ、ガンガラビ、ゴガラビ、トンボウノチ、ハトカミ、タトウガミ、カトリグサ、カラスノモチ、ムジナノチ、シコヘイ、イカシコ、ゴマンザイ、ゴマザイ、ゴマシロ、ゴマジヨ、ゴマシロカイ、カラスバナ、雀の枕[スズメノマクラ]、ゴウガメ、ゴウガミ、コウガモ、ゴガミ、ゴガミヅル、ドウガメヅル

ガガイモ科ガガイモ属の蔓性多年草。日本、朝鮮半島、中国、ロシアに分布。
夏の終わりに濃桃色の花を咲かせます。直径は1cmほどで星型。花弁には白い毛が生えて毛羽立ったフェルトのようです。

ガガイモ


茎や葉を傷つけると白い乳汁が出ます。別名の「乳草」はこれに由来するのでしょう。

名前に「イモ」と入っています。全国各地で様々な名で呼ばれていましたが、中国・四国地方でガカイモ、カガライモ、カゴイモなどと呼ばれていたのが正式名として定着したようです。一説に「カガミイモ」の転訛だとか。と言うのも、この草の日本古名は「加々美[カガミ]」だったからです。

けれどこの草に芋は出来ません。細長いながら地下茎は育ちますが毒があって食べられません。なのに「イモ」…? どこから出てきたのでしょうか。

いやいや。実は道央のアイヌは、彼らがエプンカウと呼ぶこの草の地下茎を、煮て食べていたそうです。多食しなければ大丈夫らしい。
もしかすると、そうした食習慣がかつては本土の一部にもあって、根を食べることのできる植物ということから「イモ」の名が付いたのでしょうか。

現在、「熟して茶色くなった実の様子がサツマイモに似ているから、イモと付いた」という説が流布しているようです。
個人的には、葉の形や蔓性である辺りが少し山芋に似ているので、その関係なのかもと思いますが、山芋説はまるで人気がないのでした。

ともあれ、世間的には芋に似ていることになっている実。長さ10cmほどのツンと尖った紡錘型。軽くて硬くて、ボコボコと疣[いぼ]があります。

ガガイモの実


ガガイモの実

実の皮は薄く硬く、青いうちなら剥ぎ取ることが出来ます。中には白い繊維と無数の種がギチギチに詰まっていて硬いです。が、茹でたりてんぷらにしたりみそ汁の具にして美味しく食べることが出来るそうです。しかしこれも、多食すると中毒することもあるとか。新芽や莢だけなら心配ないようですが、種子も食べる場合は茹でてよく水にさらした方がいいらしい。

実が熟すと皮が茶色に干からびて縦に裂け、中から、白く長い絹糸のような繊維をサラサラとなびかせた無数の種が露出します。この繊維を種髪と呼びます。種髪はやがてフワフワに広がり、柄のないタンポポの綿毛のように、種を一粒ずつ連れて飛散していくのでした。

種髪は綿の代用として枕や針刺しの詰めものに使われたそうで、それに因んで「草パンヤ」という別名があります。(パンヤとは詰め物用の植物性繊維のこと。)
また、種髪は印肉(印鑑用の朱を染み込ませる繊維。朱肉)としても用いられました。



ガガイモは日本神話に登場する植物として有名です。
古事記

故[かれ]、この大國主神[オオクニヌシのカミ]、出雲[イズモ]の御大之御前[ミホのミサキ]に坐[いま]す時に、波の穂より、天之羅摩船[アメのカガミのフネ]に乗りて、鵝の皮を内剥[ウツハギ]に剥ぎて衣服[キモノ]にして、帰[よ]り来る神あり

さて、大國主神[オオクニヌシのカミ]が出雲[イズモ]の美保の岬にいました時、波の上で天之羅摩船[アメのカガミのフネ]に乗って、蛾[が]の皮を丸剥きにした服(と一般に解釈されるが、原典の字義通りなら羽衣)を着て、流れ寄って来る神がいました。

出雲に流れ寄った神、少名毘古那[スクナビコナ]が乗っていた「天之羅摩船[アメのカガミのフネ]」。「羅摩/蘿藦[ラバ/ラマ/ルマ]」はガガイモの中国名で、ここでは和名「カガミ」の読みが振られています。
スクナビコナがカガミの船に乗って来た。そうとしか書いてないわけですが、多くの学者たちの千年の研究の結果、ガガイモの実を割って作った船に乗ってやって来たのだと、今では殆ど確定的に解釈されているようです。

※もっとも、異説を唱える研究者も絶えないようです。発音通り「鏡の船」と解釈して、鏡のように光り輝く船→太陽の船と解釈したり、蛇の古名「カガ」と関連付けて「蛇の船」とみなし、オオクニヌシもまた蛇神と同一視されること、オオクニヌシとスクナビコナは同一の神という解釈があることと関連付けたり。

確かにガガイモの実は船のような形に見えますよね。一寸法師系の小人神が乗るに相応しい。熟して裂けた実からはみ出る白い種髪も、白髪の小人が舟に乗り込んでいる様を連想させるかもしれません。

ただ、世界中の似たような伝承では瓜かヒョウタンの中に入ってドンブラコと流れ来るのですから、もしスクナビコナがガガイモの実に乗ってきたのなら、裂けた実の船に乗っていたのではなく、閉じた実の中に入っていたのだという方が、伝承の様式美にはのっとっている気もします。

日本書紀

初め大己貴[オオアナムチのカミ]、國 平[たいら]げ、行きて出雲國[イズモのクニ]の五十狹狹之小汀[イササのオハマ]に到りて、且[まさ]に飮食[みおし]せんとす。是の時に、海の上に忽[たちまち]に人の聲[こえ]有り。乃[すなわ]ち驚きて之[これ]を求むるに、都[ふつ]に見ゆる所無し。頃時[しばらく]して、一箇[ひとり]の小男[おぐな]有り。白蘞[かがみ]の皮を以ちて舟と爲し、鷦鷯[さざき]の羽を以ちて衣と爲し、潮水[うしお]の隨[まにま]に以ちて浮き到る

初め、大己貴神[オオアナムチのカミ](大國主のこと)が国を平定しようとしていた頃のこと。出雲の国の稲佐[いなさ]の小浜に行って食事を摂ろうとした時、海の上から唐突に人の声がしました。それで驚いて捜したものの、まるで姿が見えません。しばらくすると一人の小童が現れました。カガミの皮を舟にし、小鳥の羽を衣にし、潮任せでもって浮かび来ました。


こちらでは「白蘞[ハクレン/ビャクレン]」の字に「カガミ」の読みが振られています。
これは「ヤマカガミ」のことだと平安時代の辞書『和名類聚抄』に記載されています。昔は「カガミグサ」と呼ばれる植物が複数あって、それをヤマカガミだのヒメカガミだのノカガミだの、少しずつ違う名で呼んで区別しようとしたようですが…。ともあれ、『古事記』を参考にして、『日本書紀』の「白蘞」こと「ヤマカガミ」はガガイモのことだ、と解釈する向きがあります。

一方で、「白蘞」はガガイモのことではなく、その中国名を持つ植物、ブドウ科ノブドウ属のカガミグサ Ampelopsis japonica だという説もあります。つまり『日本書紀』のスクナビコナは、白蘞の根の皮で作った舟に乗ってやって来たというのですね。白蘞の根は巨大な塊根で、食用でもあり漢方薬にもされるものですから。
根の皮で舟を……。ちょっとばかし無理がある感じもします。ついでに言えば、この草が中国から渡来したのは江戸時代で、古代日本には存在しませんでした。


それにしても、どうしてガガイモの日本古名は「カガミ」なのでしょうか。

「カガ」という言葉には、「輝[かが]」や「赫[かく]」のような、赤々と、或いはキラキラと輝くモノの意味があります。「鏡[かがみ]」の語源もそこにあるとされます。
よって、ガガイモの何かが鏡のように光っていたのだという系統の説が人気です。

例えば、葉が鏡のようにつやつや光るから。(そうでもない)
或いは、熟した実の中に詰まった種髪、またはそれらが飛び去った後の実の中が鏡のように光るから。つまりカガミとは「輝実」の意味であると。(うーん。確かに判り易い特徴かもですね。)

ちょっと珍しい説としては、種髪で鏡を磨いたから、というのも。これはカガミグサの別名を持つカタバミの由来と混同してる感じですね。

次に、「屈[かが]む」という言葉に因むと言う説。
太い地下茎が屈むような低い位置にあるから。(どんな植物の根も低い位置にあるけど…)

なお、各地方の方言別名の中にゴウガメ、ゴウガミ、コウガモ、ゴガミ、ゴガミヅル、ドウガメヅル等とあるのは胴亀、泥亀のことで、これはスッポンの別名であり、葉の形がスッポンの甲羅に似ているからだ、という説もあります。葉脈の模様が亀甲模様に似ているとか。
でもスッポンの甲羅は丸くて亀甲模様もないので、辻褄が合いませんよね。

「カガミ」が訛って「コガミ/ゴガミ」となり、更に訛った「ゴガメ」の発音が泥亀(スッポン)を連想させたことから、葉が甲羅に似ていると言う辻褄合わせの由来説が後付けされたのかもしれません。


薬草として利用する場合は、茎や葉から出る乳汁を疣落としにします。虫刺されに効くとも。
種髪は血止めに使います。

また、初秋に葉と実を採取して日干しします。
種子を干したものを羅摩子[らまし]と呼び、滋養強壮剤として服用します。


ガガイモの花言葉
清らかな祈り
味わい深い




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【2011/01/22 20:05】 | すわさき・その他
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